浮世絵作品の紹介②

「凱風快晴」
 この作品は「赤富士」と呼ばれ、シリーズ代表作として親しまれている作品です。「凱風」とは初夏に吹くそよ風の意味です。晴れた夏の早朝に太陽の光を浴びて全山が茜色にそまることがあり、その現象を「赤富士」と呼び、この作品に表現されています。「ぼかし」などの摺師の高度な技術が発揮されて、この作品は成立します。富士山のシンプルで美しいフォルム、白い雪、幾重にも重なる鱗雲、紺碧の空といった明快さがこのシリーズでの最高傑作という評価につながっています。また、茜色は日本の伝統色で、鳥居などにも用いられている朱色と同じように、穢れを取り除いてくれると考えられ、この作品は魔よけになると、言われています。

浮世絵作品の紹介④

「上総の海路」
 房総半島から見る富士山は、今回展示の4つの作品の中で一番小さく見えます。この作品を選んだのは、水平線が真直ぐでないことです。北斎が地球が丸いことを描いていることです。三浦半島と房総半島に挟まれた浦賀水道(千葉県富津市)から描いたと考えられていますが、人工的な中で暮らす現在のわたしたちに、「もっと気付けよ、自然から学べよ」と弧の水平線は教えてくれているようです。ここでも当時の人々が、自然としっかり向き合っていること(共生していること)がわかります。
 画面中央の船は、江戸時代を代表する運搬船の「弁才船」です。当時の船も見て欲しいと思いました、働く人の姿も窓から見えます。大船建造が禁止されていた時代(幕府の命令)船頭さんは己の感覚と技術を日々磨いていたに違いありません。

今回紹介した4点の作品は本校1階に展示されています。10月27日(日)の学校説明会に参加されました際には、ぜひご覧ください。

 

 

校内にある美術作品を紹介するシリーズ第1弾は浮世絵。今回より具体的な作品紹介をしていきます。

浮世絵作品の紹介①

「神奈川沖浪裏」
 この作品は浮世絵の中でも最も有名な作品です。「浪富士」とも呼ばれ親しまれています。ダイナミックな大波に目を奪われ、三艘の舟が今にも波にさらわれそうでハラハラさせられます。しかしその奥には小さいながらも安定感のある富士山が座っている。この静と動のリズムは、見ていると画面の中に吸い込まれるような不思議な構図です。
 画面の舟は鮮魚を千葉や神奈川から江戸に運ぶ「押送船」と呼ばれる船です。荷がないことから帰路と思われます。きびしい自然と対峙する当時の人々を見ると、「俺も頑張ってるから、おまえも頑張れ」と言われているような気がします。