ちなみに、今年度の表紙のことばは、昨年度までと一緒で「Be a Global Citizen」です。そしてその意味は「地球社会の一員として国際社会に貢献できる女性(ひと)になろう」という意味です。育てたい皆さんの“姿”をずいぶん大きくとらえています。「グローバル」ということばが「学校教育の中で頻繁に使われだしたのは、たぶん皆さんの保護者の方々が生徒だったころ、1990年代です。
わたしが両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、 飛べる小鳥はわたしのように、地面(じべた)をはやくは走れない。 わたしがからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、 あの鳴る鈴はわたしのように、たくさんなうたは知らないよ。 鈴と、小鳥と、それからわたし、みんなちがって、みんないい。 The bell and the bird and I– All are different and all are good.
という見出しで、アメリカでみすゞの「詩の絵本」が出版され、共感を得ている、といった記事でした。今、世界は人種や宗教等様々な要素によって、人を差別したり、排除したりする傾向が強くなってきているといわれています。そのような中で、金子みすゞの「国や時代を超えて、誰の心にも響く詩(うた)、分かりやすい言葉の窓を開けると、大きな宇宙が見えると感じた。」と評価されているのです。 新入生の皆さん。「わたし」と「小鳥」と「鈴」はいうまでもなくみんな違います。みすゞは「みんなちがってみんないい」と究極のことばで締めくくっています。世界中の人たちが「わかりきっている」と言えたら、この世には戦争も差別も、そして“いじめ”もないはずです。 しかし、私たち「人間同士」でも、いや人間だからこそ「みんなちがって みんないい」そのようにいえないでしょうか・・・。人は、特に子どもは、「自分と同じようでない人」を、しばしば比べ「あの子は私たちと違う」「あの子は変な子」と否定的に言います。 でも、新入生の皆さん。皆さんは、中学生になるのです。「いろいろな人がいて、楽しい」「自分と違う人がいて、ワクワクする」そんな中学校生活を送れないだろうか・・。「みんなちがって みんないい」この言葉は、難しい言葉でいえば、「多様性の尊重」と言います。実は、今の社会の中で一番求められているものなのですよ。 私は、素直にまた心躍らせながら、人間の「多様性」を肯定的に受け入れる事ができる人になれるよう、この東京女子学院での、女子校での、生活で成長していくことを心から願っています。 新入生の皆さん、さらに言いますね。中学生になったのだから、他人の、自分と違うところを否定的に比べるのではなく、ぜひ、「自分自身の今を、昨日の自分、昨日までの私」と比べて欲しい。そうやって「今の自分」を評価して欲しい。そう思うのです。つまり、6年生の時、勉強でうまくいかなかったけど、中学生になったら集中してがんばれるようになった。昨日は自分の考えをうまく伝えられなかったけど、相手の気持ちになったら、上手に伝えられるようになった・・。というわけです。簡単な言葉でいえば、「向上心」です。 新入生の皆さん。皆さんは、公立中学校のように地域の2~3校の小学校から集まったのではなく、ほとんど違う小学校での生活を送ってきました。一人ひとり12年間の歴史をもって本校で出会ったのです。 そして入学した皆さんの中には、いろいろな人がいる。スポーツが得意な人、読書が大好きな人。おしゃべりが大好きな人、あまりおしゃべりが上手でない人、大勢でいることが好きな人、一人でいることが好きな人…。「みんなちがってみんないい」そう、とてもいいことではないですか! Every one is different, every one is special. 「多様性」と「向上心」このことをぜひ頭に入れて、中学校生活を送ってください。 保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。今日からお子様の中学校生活が始まります。小学校6年間の「児童としての生活」と、中学高校6年間の「生徒としての生活」は同じ年月にもかかわらず、3倍も4倍もの様々な成長があります。 保護者の皆様は小学校時代の「子育て真っ盛り」の生活から、子どもたち自身による「自分育ち」を少しずつ側面から見守るといった「子育てのスタンス」となるでしょう。その意味で、小学校の時以上に学校とご家庭が「子どもの健全な成長」という同じ目標をもっていきたいと思います。そして、ぜひ小学校の時と同様に、笑顔で送り出し、学校から帰ったら学校であったことをたくさん聴いてあげてください。 私はこの学校を “まじめ”と“誠実”に価値をおける学校にしたい。どんな場面でもまじめにコツコツ取り組む生徒を評価したい。そして、生徒一人ひとりの“自分らしさ”を大切にした教育活動を進めていきたい。そのように思っています。新1年生として、学校生活に慣れ、早く「東京女子学院大好き」になれるよう、教職員一同全力を尽くして教育にあたります。安心してお子様をお預けいただくようお願いいたします。 新入生の皆さん、今日から中学生です。新入生の皆さん、一緒にがんばりましょう。新入生の、そして全校生徒の、生き生きした毎日の生活の充実を願って、私の式辞といたします。