浮世絵作品の紹介④

「上総の海路」
 房総半島から見る富士山は、今回展示の4つの作品の中で一番小さく見えます。この作品を選んだのは、水平線が真直ぐでないことです。北斎が地球が丸いことを描いていることです。三浦半島と房総半島に挟まれた浦賀水道(千葉県富津市)から描いたと考えられていますが、人工的な中で暮らす現在のわたしたちに、「もっと気付けよ、自然から学べよ」と弧の水平線は教えてくれているようです。ここでも当時の人々が、自然としっかり向き合っていること(共生していること)がわかります。
 画面中央の船は、江戸時代を代表する運搬船の「弁才船」です。当時の船も見て欲しいと思いました、働く人の姿も窓から見えます。大船建造が禁止されていた時代(幕府の命令)船頭さんは己の感覚と技術を日々磨いていたに違いありません。

今回紹介した4点の作品は本校1階に展示されています。10月27日(日)の学校説明会に参加されました際には、ぜひご覧ください。

 

 

浮世絵作品の紹介③
「武州玉川」

 玉川は現在の多摩川のことで、画面には六郷の渡し(駅伝で有名になった六郷橋 大田区南端)が描かれています。この作品で注目して欲しいのは、摺師が水分の調節で行うぼかしなどの技術で、特に美しいのが川面の水の表現です。水面が白く輝いているように濃淡をつけ、さざなみを空摺りで表現しています。空摺りは絵の具をつけないで摺る技術で、そのため紙の良し悪しも出来栄えに影響します。今回展示している浮世絵の和紙は、人間国宝、岩野市兵衛氏の和紙(越前生漉奉書紙)です。1枚の作品に多くの技が潜んでいることや、江戸時代の分業の素晴らしさを垣間見ることができます。 
 また、この作品を選んだ理由は、涼しげなことのほか、生徒が通ってくる、地域(東京西部 多摩地域)には玉川の恵や文化があることに目を向けて欲しいこと、そして馬や舟が当時の物資運搬に重要だったことなどです。

浮世絵作品の紹介②

「凱風快晴」
 この作品は「赤富士」と呼ばれ、シリーズ代表作として親しまれている作品です。「凱風」とは初夏に吹くそよ風の意味です。晴れた夏の早朝に太陽の光を浴びて全山が茜色にそまることがあり、その現象を「赤富士」と呼び、この作品に表現されています。「ぼかし」などの摺師の高度な技術が発揮されて、この作品は成立します。富士山のシンプルで美しいフォルム、白い雪、幾重にも重なる鱗雲、紺碧の空といった明快さがこのシリーズでの最高傑作という評価につながっています。また、茜色は日本の伝統色で、鳥居などにも用いられている朱色と同じように、穢れを取り除いてくれると考えられ、この作品は魔よけになると、言われています。