東京女子学院お宝発見!浮世絵シリーズ 7回目
浮世絵作品の紹介⑤
「上野清水堂不忍ノ池」
明治のはじめ、上野戦争で堂宇のほとんどが焼失した寛永寺。画面の中央にせり出た建物は奇跡的にその焼失を免れた清水観音堂の舞台です。舞台で有名な京都の清水寺を模してつくられました。
現在の上野公園全域は、かつて徳川家の加護により天海和尚が寛永寺の寺領を利用してつくりあげたテーマパークでした。そのため舞台から眺めている不忍池も琵琶湖になぞらえたもので、中島には竹生島に倣った弁天堂もあります。また、この地域は江戸一番の桜の名所でもあり、画面ではちょうど満開の春を華やかに描いています。また、画面左の丸くねじれた松は「月も松」と呼ばれた有名な松で、現在は「ぐるぐる松」とも呼ばれ、舞台の下に再現されています。広重は他の浮世絵でも「月の松」を描いており、お気に入りだったように思われます。
簡単に京都へ旅できなかった時代、京都旅行を疑似体験できるそんな場所をつくってしまう発想や力に驚かされます。