
皆様 ごきげんよう。校長ブログを開いてくださった皆様、ありがとういございます。3月12日以来になりますね。
やむを得ない臨時休校とはいえ、「学校教育」に長年がかかわってきたものとして「生徒のいない学校」の状況というものは、表現しようのないもどかしく残念な“思い”をもたざるを得ません。併せて、年度末の“終わった感”が生徒にはもちろん、教員にももてないことは、新学期を迎えるにあたって、“モチベーション”を(アップどころか)維持することさえ本当につらくなってきています。・・
そのような中で・・本校では、先週の21日(土)に令和元年度「修了式」と「中学校課程修了式」を行いました。修了式では、3月2日からの臨時休校についての説明とともに、先日の”専門家会議”で示された、学校がクラスターにならないための大切なことをきちんと説明するとともに、臨時休校のさなかであるが、「日常の、“ありふれた”学校生活を送れることがどんなに幸せなのか」ということを話しました。中学校課程修了式の式辞も合わせて掲載させていただきます。
令和元年度修了式
皆さん、ごきげんよう、令和元年度の修了式となりました。この3週間の臨時休校の中で、生活リズムが崩れ、体調を崩していませんか?昼夜逆転してしまって、体の抵抗力がなくなり、「新型コロナ」とは別の病気にかかり・・・私はとてもそれが心配です。
ところで、3月8日、高校3年生は“無事”に卒業式を終え、この東京女子学院から巣立っていきました。参列できなかった皆さんにまず報告をしておきます。特に、生徒会長の○○さんは“送辞”を担当し、素敵なおくる言葉を考えてきてくれました。代表で参列・・・と思いましたが、できるだけの“時間短縮”ということで、“送辞”は印刷して学事報告の中に入れさせてもらいました。○○さん、心のこもった送辞、ありがとう。そして、お疲れ様でした。
さて今日の本題。やはり、卒業式についてです。今日、話題にしたい卒業式は、9年前の宮城県の卒業式です。K市立H中学校の卒業式の中で卒業生の代表 □□君が「答辞(別れのことば)」を述べました。3月11日の大震災がなければ、その翌日に行われていた卒業式ですが、体育館が避難所となり、数名の卒業生が命を失う中で、10日後に、避難者の方が大勢いる中で行われました。当時、テレビで放送され全国の視聴者が涙しました。この式での映像を入手したかったのですが、どうしても手に入れることができませんでした。そこで、勇気を振り絞って、この中学校に直接電話をして、映像を保管しているか聞きました。保管していれば、お借りしようと思ったのです。しかし、残念ながら式の映像を保管はしていませんでした。しかし、代わりに、「防災教育」に使用されている映像を送っていただきました。そして、答辞(別れのことば)の全文は修了式で話をすることをご承諾いただきました。すごい津波のシーンが出てくる映像ですが、見てください。そして、涙をこらえて□□君が必死で別れのことばを述べています。よく聞いてください。
(映像を流す)
今日、私がこの答辞(別れのことば)を修了式で紹介したいと思ったのは、「しかし、苦境にあっても天を恨まず運命に耐え、助け合って生きていくことがこれからの私たちの使命です。“あたりまえ”に思える日々や友達が如何に貴重なものかを考え、いとおしんで過ごしてください。」という部分です。皆さん、今のことを改めて自分の学校に置き換えられるか・・・ということです。H中学校の教頭先生のメールにはこう書かれていました。
全国各地から様々なお話を頂戴し,交流がもてますことに感謝申し上げます。今回,野口校長先生からお話を頂戴できましたこと,大変嬉しく思っています。H中学校は,震災時,K市内で一番被害の大きかった地域です。ご家庭の状況も,まだまだ復興という言葉は使える状況にありません。しかし,□□君の答辞にもありますが,生徒達はあの言葉に負けないくらい頑張って学校生活を送っています。これは,子ども達やこの地域の力だけではなく、全国各地からの応援やメッセージ,本校の防災学習を学びたいと足をお運びいただける学校や各種団体から力をいただくなど皆様の応援が子ども達の生きる力につながっていると感じています。□□君の言葉,ぜひお使いいただき,野口校長先生からのメッセージとして生徒さん達にお伝えいただければと思います。
K市立H中学校 教頭 △△
さて、“令和”に変わった今年度もこの3月31日で終わります。1年生としての1年間、2年生としての1年間、皆さんはそれぞれ「自分らしく」成長しましたか。自分自身では、自分が成長したという実感はありますか?実は、こうして卒業式や修了式を迎えられることも、幸せだし、学校に来て、学習して、友達と語らって、お昼を食べて、部活をして・・・といった、「学校でのあたりまえ」が本当に幸せなことなんだと思うのです。そして、その中で、自分自身が成長したと実感があればさらなる「向上心」が湧いてくるのだと思います。皆さんの一人ひとりが、自分自身のために、よりよい学校生活を目指しお互いで切磋琢磨できる学級や学校になれば、例えば「いじめ」や「差別」等といったことは起こりようがないと思うのです。春休みです。皆さん、甚大な被害が出てもなおもって「天を恨まず、助け合って生きていく」と言った□□君のように、「前向きな」気持ちで4月1日を迎えてください。以上で修了式の話とします。
中学課程修了式 式 辞
本格的な春の日差しが降り注ぐようになりました。おだやかな春のこのよき日、令和元年度 東京女子学院中学校の中学校課程修了式を行えることは本当にうれしいことです。本校が、中高一貫校とはいえ中学の課程を修了したということは、義務教育の修了でもあります。本校を去る皆さんにとってももちろんですが、保護者の方々にとって、ひとつの区切りとなるわけです。保護者の皆様、お子様の中学の課程の修了、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。この3月、臨時休校とはいえ、一日も学校に来ることなく、この日を迎え、皆さんは、たぶん小学校の時とは違う“終わった”感のない感覚で義務教育を終えることになります。私は、長く校長をしてきてこの休校はやむを得ませんが、何とか晴れやかな気持ちに少しでもなれるような話をしたいと思います。そして、中学の生活から、高校の生活になります。その中で私の式辞が、高校に上がる皆さんにも今日で本校を去る皆さんとっても「自分らしく」自信をもって生活できるようになればと思います。中学3年を終える皆さん、私はこの東京女子学院にきてようやく2年が終わろうとしています。年数では皆さんが先輩です。昨年度、高校3年生と「面接練習」をしたとき、とても驚きました。“礼”の仕方が、私が今まで経験してきた若い人たちの“礼”の仕方とよい意味で違っていた生徒がいたからです。「この生徒の雰囲気は(よい意味で)違うな」と思い、先生方に聞いてみると、中学受験をしてきた“一貫生”でした。皆さんは12歳から「礼法」や「華道」を学び、心を鍛えた、感性をより豊かにした。思いやりや感謝の気持ち、素直に感動する心を育てた。高校から入ってきた生徒と一貫生での違い・・・それはたぶん3年間培われてきたこのような部分で違うのではないか、私はそのように思いました。
そう、皆さんは、3年間で身体の成長とともに心が成長した。「古きよき女子教育」や「至誠努力 終始一貫」ということがよく分からなかったかもしれないが、だんだんと理解し成長した。そう思います。皆さんは、いよいよ16歳、高校生です。そして、皆さんは、高校から本校に入る生徒と一緒に生活することになります。不安ですか?それともワクワクしますか?不安でもワクワクでもよい。高校から進学してくる生徒と仲間になる秘訣は、「相手の話を目で聞き、相手が大切だと思っていることを心で見る」ことです。そして、皆さんが、より良い学校づくりの先頭を担ってほしい、そのように思うのです。ぜひ、中学で学んだことを次のステージでよく生かしてほしい、そのように思います。
保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。義務教育を終えられる安ど感、そしてついこの間まで手取り足取りしてきたお子様の、今の成長ぶりに、少しの感慨と一抹の寂しさもお持ちなのではないでしょうか。しかし、「保護者」としてのひとつの区切りとはいえ、真に自立した女性になるにはまだまだ「保護者」の方の支えが必要であると思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。そして、3年間、本校の取組に対して物心両面のご支援とご協力をいただきましたこと、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
さて、中学3年を終える皆さん、皆さんは、東京女子学院での生活に自信と誇りをもって、高校生になってください。中学3年を終える皆さん、特に・・・・本校から旅立つ皆さん、最後の最後に・・
ちょっとやそっとじゃへこたれない、落ち込まない、たくましく生きる高校生になりましょう。
そして、お互いがんばりましょう。中学3年を終える皆さん。君のこれからのさらなる成長に期待しています。
令和2年3月21日
東京女子学院中学校高等学校長
野 口 潔 人