「大はしあたけの夕立」 (おおはしあたけのゆうだち) ・・・ 夏 ・・・

大橋は、日本橋浜町から深川六間掘に掛かっていた橋で、現在の新大橋です。幕府がここに御用船、「安宅丸」(あたけまる)の船蔵を設けたことから、深川のこの地域が安宅とよばれました。ちなみに「安宅丸」は別名「天下丸」とも呼ばれ、徳川家光在位中に完成した軍用船。その大きさや豪華さから、富士山や東照宮にもたとえられ、江戸の名物・名所となりました。
突然振り出した夕立。雨は角度や濃さが違う2類の線で表現され、傘やむしろに容赦なく降りそそいでいます。橋の上を足早に急ぐ人々の姿は、その気持ちもあらわしているようです。

 

「亀戸梅屋敷」 (かめいどうめやしき) ・・・  春  ・・・

梅屋敷は、8代将軍徳川吉宗が百姓喜右衛門が所有した清香庵という梅園を称賛したことで有名となりました。現在の江東区亀戸3丁目、亀戸天神の北東裏手にあたります。
近景を大きく描き、遠くを眺める広重好みの構図の代表作です。近景の梅の古木は、数色の重ねずりで、濃淡から古木の持つ質感を見事に表現しています。また、枝が横にはい、あたかも龍が伏せているような臥龍梅(がりゅうばい)は大胆な表現です。馥郁(ふくいく)たる香りで春の訪れを告げる梅、それを楽しむ人々もていねいにあらわしています。ゴッホが模写したくなるインパクトがこの絵にはあります。