

皆さんごきげんよう。久しぶりのブログ更新です。お隣のお寺の梅花が満開になりました。校内の早咲きの河津桜も…。先日、高校卒業式を挙行しました。前日の予行で全校生徒が一堂に会し、そこでも最後の校長からのスピーチをしました。
式辞
はじめに・・・PTA会長 ○○様、同窓会会長 △△様には公私ご多用のところ、ご臨席賜り誠にありがとうございます。また物心両面にわたるご協力・ご援助に対し心より御礼申し上げます。
さて・・「冬来たりなば春遠からじ」ようやくそこここに春の気配を感じるようになりました。
卒業生の皆さん。いきなりですが、3年前を思い出しましょう。中学校でまともな“卒業式”ができず証書だけを受け取って義務教育を終え、本校に入学しても“式”は行われなかった。しかも「Stay home」を2か月も強いられた。そんな3年間のスタートでした。
「There is always light behind the clouds.」
6月、梅雨に入っての「入学式」で私は今の言葉を紹介しました。このことば、世界中で愛され続ける大ベストセラー作家、ルイーザ・メイ・オルコットのことばです。今日は、このことばとオールコットの書いた小説「若草物語」をベースにした映画を取り上げて、私の式辞といたします。
3年前の春休み、ある映画が封切り直前に、コロナのために延期されました。その映画とは「Story of My life」(私の「若草物語」)という映画です。
実は、入学式でこの映画を話題にしようと思ったのですが、映画を見られなかったので、この有名なことばだけを紹介したのです。そして皆さんの“休校期間”が解けるころ、改めて封切りされたので、私にとってこの映画はとても印象深いのです。何と、その年のアカデミー賞の衣装デザイン賞を獲得しているのですよ。
皆さんの中には、幼少期「若草物語」を楽しく読んだ人がいるかもしれません。アメリカ人にとってはこの物語が人生に寄り添うほどとても重要な作品で、クリスマスシーズンになるとテレビで放送される映画の必須作品のひとつです。
それは1860年代、アメリカ南北戦争中のある家族「マーチ家」の四姉妹の物語です。長女メグは女優を夢見、次女ジョーは作家になりたい。三女ベスはピアノが上手いが病弱、そして四女エイミーは画家になりたい。日常生活のなかの他愛もない事で喧嘩したり、時には助け合ったり、“女の子”がそれぞれ“女性”に成長し、4人が4人とも個性豊かに、そして将来への葛藤を様々に持ちながらも、常にポジティブに生きようとし、めぐるチャンスを活かして夢を実現していくのです。三女のベスは病気がもとで若くして亡くなりますが、それでも自分の生を誰かのために全うしていく姿はとても感動を呼びます。はい、長々と映画の紹介をしました。
卒業する皆さん。かなり時代遅れの言い方になりますが、この映画で描かれた時代は「女性は家事や育児だけをしていれば良いという時代」でした。その中での彼女たちの生き方の選択には実に現在に通じるものがあります。もちろん今は大きく変化し、例えば「夫婦別姓」の問題や「性差別やジェンダー平等」についても、今まさに大きな社会問題のひとつにさえなっています。今年度の本校のパンフレットには「Be a Global Citizen 国際社会に貢献できる女性へ」の“女性”を“ひと”とフリガナを振っています。
改めて、皆さん、「Stay Home」で始まった高校生活が、3年の時を経て、マスクを取って生活できる日までもう少しとなりました。東京女子学院で6年間・3年間を送った皆さん姉妹たちが「マーチ家」の四姉妹のように次のステージで “女性”と書いて“ひと”と表現できるような一人ひとりの生活のスタンスをもってくれたら、と願うばかりです。
映画の最初のシーンに戻ります。主役の次女ジョーはまさに作者オールコットを投影しているのですが、出版社に自分の作品をもっていき編集長に原稿を見てもらいます。いくつか注文を付けられますが、原稿を何とか買ってもらいます。女が走ることはふしだらだと言われていた時代、ジョーは喜び勇んで人ごみのなかを走り出します。女性らしいとか女性はこうであるべきなどという慣習を取っ払って、この時の喜び溢れる顔はとても素敵、まるで、雲の上の“青空”のような明るさを発揮するのです。皆さん、大学などの次のステージに行く前にぜひこの映画を見てほしい、そのように思います。
改めて、私は皆さんには、折に触れて「真の自分らしさとは何か」とか「ポジティブに考える」ということを努めて訴えてきたつもりです。それは「悩み多き思春期」から「生き方を選んでいく青年期」のこれからの人生にとって一番大切なキーワードだと思うからです。これからの生活の中で人間関係等様々なことで、うまくいく時もあれば躓いてしまうこともある。いや、うまくいかないときが必ずある。しかし、
「There is always light behind the clouds.」
このことばを頭のどこかにおいて、自立した素敵な女性に成長しほしい。そう思います。
保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。思えば、小学校からの12年間におよぶ「児童・生徒の保護者」を終わることに、一抹の寂しさとともに、お嬢様以上の感慨をお持ちなのではないでしょうか。しかし、「保護者」としてもひとつの区切りとはいえ、お嬢様が真に自立した成人女性になるには「大人の先輩」としての支えが必要であると思います。どうか、“我が娘”の卒業を祝うとともに「18歳成人」の在り方を見守っていただきたいと思います。
そして、6年間・3年間、本校の取組に対して物心両面のご支援とご協力をいただきましたこと、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
さて、卒業する皆さん、さあ、いよいよお別れです。
皆さんは、「コロナ」のなかでのできることを工夫して精一杯やってきた。その自信と誇りをもって、次のステージで、自分らしさを発揮して活躍してほしい、人生百年時代の社会の中で、それぞれの持ち場で貢献してほしい、そう願っています。卒業する皆さん、最後の最後に・・ちょっとやそっとじゃへこたれない、落ち込まない、たくましく生きるタフな女性になりましょう。そして、お互いがんばりましょう。
卒業していく皆さん。いつまでも応援しています。
令和五年三月吉日 東京女子学院高等学校 校長 野口潔人
「卒業式予行」に際しての話
1 「予行」ということですが、「全校生徒が一堂に会す」ということは、この予行が最後になります。卒業生だけではなく在校生含めての本年度の私の最後の講話とします。少し話す時間をください。
2 「冬 来たりなば 春遠からじ 」皆さん、1月のことを思い出してください。
3 1月の最終週、最低気温がマイナスを記録する日が続きましたね。私は、あまり寒暖を気にしない体質なのですが、それでもあのときの寒さは堪えましたね。校長室にストーブを入れたのは、その時からでした。「いやぁ~寒いね、自転車登校つらいな」 「寒くて×2、授業中震えていました」皆さんもきっとこんなつぶやきがそこここであったでしょう。
4 「冬 来たりなば 春遠からじ。」
この言葉、日本や中国のことわざのようにも思えますが、実は、英国詩人シェリーの詩の一節なのです。寒く厳しい冬が来たならば、暖かな春の訪れもそう遠くはない、ということから「たとえ、つらい状況にあっても、耐え忍んでいればやがて幸せなときもめぐってくる」という意味で使われます。
5 「冬 来たりなば 春遠からじ」
あの寒かった時に、私はこのことばをふと思い出しました。「このことば、ずいぶん安易だな…」と思う一方で「究極の“ポジティブ”な発想では?」とも思ったのです。そして、私たちの“今”と“これから”の生きていくスタンスにしたい、と思ったのです。
6 そう、“今”と“これから”の時代は、※「VUCAの時代」ともいわれます。(一度、“講堂朝礼”で話しましたね。VUCAとは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の英語の頭文字をつなげたことばです。)
これを聞くと、皆さんの活躍するこれからの社会はお先真っ暗なのかと不安にさいなまれる?「こんなはずではなかったぁ~」と嘆いても、捉え方によっては「経験していないからワクワクだね!」と思えるかもしれない。そう思えたらステキ、そんなポジティブな発想・思考をこれからのステージで獲得してほしい。
7 ところで…3年生の皆さん。いよいよ卒業ですね。「コロナ」から…あの“6月入学式”からはや3年。4月・5月の「スティホーム」…そうそう、そのステイホームの“一日一日”はとても長く感じたが、この3年の短かったこと…。皆さんは、この“矛盾”を肌で実感しているのでは?と思います。「3密回避、換気だ!」「黙食、大声でしゃべるな!」「留学に行けなかった」「コロナに罹って修学旅行にいけなかった、一緒に帰ってこられなくなった」「部活の試合が、楽しい行事が……延期・中止」
一人ひとり(たぶん)ネガティブな思い出があったでしょう。コロナだけでなく、親との意見の食い違いとか、お友達との関係がうまくいかなかったり、成績が思うように伸びなかったり、なぜだかわからないけど、イライラしたり、やる気が出なかったりでも、いよいよ、コロナ終息をイメージして、そして「必ず春になる」ことをイメージして、ポジティブな発想・思考を獲得してほしい。そう思うのです。
8 Well-Being、誰もがしあわせになる因子(要素)の4つ。
「やってみよう」因子・「ありがとう」因子・「なんとかなる」因子・「ありのまま」因子これもどこかで話ししましたが、この4つの要素=因子を少しでも具現化させたい。人生は一回きり。VUCA時代の君の人生も一回きり。いつの時代でも、結局はポジティブでアクティブな発想・思考が私たち人間を救ってきたのだ、と私は思うのです。
9 在校生の皆さん、私は教員になってこの「東京女子学院」でちょうど10校目の学校です。どこの学校にいても、私はいつも「3年生がよい学校は、よい学校」と思っていましたし、激励の意味も込めて折に触れてそう言っていました。「3年生がよい学校は、よい学校」それは、「下級生よりも良いとか悪い」とかいうことでなく、3年間・6年間でよりよく成長していく、ということです。明日、卒業する高校3年生は、このことを、実によく実践してくれた、具現化してくれた、そのように思います。
10 在校生の皆さん、ぜひ部活や委員会、行事や日々の学校生活の中で、「3年生がよい学校はよい学校」このことを引き継いでいってくださいね。そのような気持ちを心の片隅において、来週からの「学年末考査」のために、明日はしっかり「自宅学習」をしてくださいね。
以上で、予行での校長からの話とします。