卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。

皆様、ごきげんよう。「校長ブログ」を開けてくださった皆様、そして在校生の皆さん、お元気でしょうか?急遽の休校になり1週間が経ちました。止むを得ずの対応であるものの生徒のいない学校は実にさみしいものです。
 本校の教職員には、休校期間の生徒の学習については「適切な課題」を出してもらいました。私も「クラッシー(アプリ)」上で確認をしましたが、たくさん出ていますね。在校生諸君はしっかりとこなしているのでしょうか。しっかり頑張ってくださいね。さて、様々な「イベント」開催の自粛、大学等が卒業式を中止する中で、本校では3月8日、“時間短縮”“来賓なし・在校生なし”で卒業式を挙行しました。社会での暗いニュースの中で、昨日(3月7日)大学受験をする生徒の中での最後の生徒が“国立大学に合格!”という報告を受けるとともに、8日当日は、朝早くから、生徒一人ひとりが久しぶりに会った喜びを表情全般に表していました。もちろん、マスク着用・咳エチケットを励行した上でですが・・。集団感染を防ぐべく、様々な対応をして、卒業式はちょうど1時間で式を終えました。せっかくですので、私の式辞を省略形で載せておきます。休校になってから、まだ1週間しかたっていません。本校の生徒だけでなく、たぶん、中高生たちは毎日が長くてしょうがないのではないでしょうか。在校生も読んでくださいね
      式  辞
 皆さん、ごきげんよう。卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。卒業証書を受け取った、たった今の心の中はどのような思いをもっているでしょうか。今回の卒業式は、思いもよらず、予行もなく、本日を迎えなければなりませんでしたが、証書授与にあたっては、時間短縮せず、「壇上で一人ひとりがしっかり受け取ってほしい」私たちのそのような思いを、しっかり受け止めてくれました。(中略)
 卒業生の皆さん。改めて言います。今日この日に卒業証書を受け取ることができたことは、本当に素晴らしいことなのだ、ということを自身で感じ取ってほしい。そして受け取った卒業証書が、今後の皆さんの社会生活・職業生活に「高卒・大卒」といった“学歴”だけではない、大きな価値となることが分かるときが必ず来る、そのように思っています。 
 卒業生の皆さん。今日ここに、私は2冊の本をもってきました。こんなに汚く古いのですが、どうしても捨てられない本なのです。1冊は「世界名言集」、私が教員になる1年前、昭和56年出版となっています。私は昭和57年にこの教師という職に就きました。たぶん、生徒たちと話をするために“先哲”の名言を参考にしていたのでしょう。
 もう1冊のタイトルは「現代コーチング心理学」です。・・裏表紙に図書館での貸出票が入っているので、いまだに返していないのかもしれません。最後の貸し出しが昭和51年、私は皆さんと同じ高校3年生、母校の中学校でバスケットボールのコーチを始めていました。
 この本のなかに、次のような言葉が出てきます。読みます。

やめるな

ものごとがうまくいかないとき・・(中略)
心配事が少しあなたを押しつぶしているとき、
もし休息する時があれば休息せよ・・・

しかし やめるな

(中略)

そして最後までしんぼうしていたならば、
勝っていたであろうというときに、
多くの失敗がぐるりと回ってくる。
たとえ速度はゆっくりのようでも、やめるな・・・
もうひと努力で、
あなたは成功するかもしれないのだから

これは、アメリカの詩人、ジョン・ボイル・オレイリーという人の作です。この詩の最後はこのようなことばで終わっています。

あなたがやめてはいけないのは、最悪と思われるときだ。
  
 私は、この言葉に出会ったとき、この本は捨てられない・・と思ったのか、本の整理をするたびに、常に私の本棚の片隅にありました。そして、私自身「最悪だ」と思った時、この本のこの最後の言葉を口ずさむようにしていました。 
 卒業生の皆さん、先日の私の卒業講話で皆さんの30年後の世界を考えてもらいました。よく言われる、先の見えない不確実な時代です。一方、皆さんが、自立した女性として立派にこの社会を支えていく人になっていなければいけません。そして、これからの皆さんは、高校生活の時以上に、自分にとって“好きなこと”やより興味のあることに没頭できるようになるはずです。しかし一方で、皆さんが、中学・高校と生活してきたなかでの困った時や悩んだ時以上に、たぶん・・・「やめたくなる時」や「最悪の時」があるかもしれない。そして、そのようなとき、皆さん一人ひとりにとっての「捨てられない1冊」「勇気をもてる言葉」に出会える次のステージを心から期待しています。
 そう、皆さんが「捨てられない1冊」「勇気をもてる言葉」に出会うためには、毎日を「自分らしさとは何か」をとことん考えて生活していくこだと思います。
 保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。小学校からの、12年間におよぶ「児童・生徒の保護者」を終わることに、一抹の寂しさとともに、お嬢様以上の“感慨”をお持ちなのではないでしょうか。しかし、ひとつの区切りとはいえ、お嬢様が真に自立した女性になるにはまだまだ「保護者」の方の支えが必要であると思います。どうぞよろしくお願いいたします。
そして、6年間・3年間、本校の取組に対して物心両面のご支援とご協力をいただきましたこと、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 さて、卒業する皆さん、さあ、いよいよお別れです。

 今回、万やむを得ずこのような在校生のいない「簡素な卒業式」になってしまいました。思えば、皆さんの本校での3年間・6年間は「制服」が変わっただけでなく、多くのことが変わりました。そのような中で、“やめない”で自分らしさを自ら育んできたことに私は敬意を表します。その自信と誇りをもって、次のステージで、自分らしく、凛とした女性として活躍してほしい、人生百年時代の社会の中で、それぞれの持ち場で社会に貢献してほしい、そう願っています。

 卒業する皆さん、最後の最後に・・

 ちょっとやそっとじゃへこたれない、落ち込まない、たくましく生きるタフな女性になりましょう。そして、お互いがんばりましょう。
卒業していく皆さん。応援しています。
令和2年3月8日 
東京女子学院中学校高等学校長
 野 口 潔 人

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