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教職員コラム「待つ」

2018年6月 7日08:00 |
先日、生誕150周年『横山大観展』を見る機会を得ることができました。感動する作品や有名な作品がたくさんあるなか、代表作である「生々流転」にはあらためて驚かされました。
 40メートルにも及ぶ日本一長い画巻であり、水墨画の集大成と言われるこの作品は、山間に沸きたつ雲から一滴の雨が地に落ち、やがて川となって流れ始めます。川は周囲を潤し、川幅を広げ、海へと流れ込みます。その後、荒れ狂う海には龍が踊り、雲となって天へと昇り、ストーリーはもとに戻ります。
 この水の変化のなか、なんだこれは?と思う画面がありました。後半に描かれた、一見無駄とも思える変化のない3メートルぐらいの静かな海です。単調な海が長く続くのです。もっといろいろ描けば見る人は楽しいし、もったいないと考えてしまうような波だけの画面。しかし、この表現は「再生」や「動」にむけて大切な「力のため」や「ゆだねる」または「待ち」の姿勢を示しているように思えたのです。
 他のものに転じて考えてみても、味噌や醤油も醸成を「待ち」ます。焼き物も最後は「待ち」ます。「待ち」は日本文化の大切な要素であり、精神性のように思うのです。
 先や結果を急いだり、強く求めるあまり、もしかしたら「待つ」ことの大切さを現代の社会では見失いつつあるのかもしれません。21世紀の教育のキーワードには上がっておりませんが、勉強も人との関係も「待つ」ことでより良いものや輝きが増してくるように感じます。
 ちなみに「生々流転」を最前列で見るにはかなり待ちました。でもよかったです。「待つ」価値がありました。
教頭 小林 伸嘉
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